一、〈煮〉―「和菓子屋のあの子」
幼い頃から、餡子あんこの匂いが好きだった。 自室にいても、家のどこにいても、ふと鼻をくすぐるのは、手作りの餡子の香り。これが、我が家の匂いだった。 饅頭を蒸す蒸し器や、豆を煮込む大きな鍋が、早朝から休むことなく働く我…
歴史と映画と、小説と、ときどき行政書士。
幼い頃から、餡子あんこの匂いが好きだった。 自室にいても、家のどこにいても、ふと鼻をくすぐるのは、手作りの餡子の香り。これが、我が家の匂いだった。 饅頭を蒸す蒸し器や、豆を煮込む大きな鍋が、早朝から休むことなく働く我…
吉田という男を私はよく知らなかったが、数学の授業で彼と隣になり、何度か顔を合わせるうちに、わかったことがいくつかある。 こいつは、私以外には饒舌だ。 私と話す時とは違って、噛まずに話せるし、ちゃんと相手の目も見られる。 …
今日の数学は、新単元。何やらややこしい、図形の証明なるものをしなければならないらしい。 数学なんて、公式を覚えてひたすらに数字を書いていれば良いと思っていた私は、ここで国語力と暗記力をも身につけなくてはならなくなった現実…